田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
店に戻ると皆が集まってきた

山蘭やスミレ…街では見れない素朴な花達シイエの田舎がその小さな苔玉に見事に再現されていた

ずっと長崎に居た奥様には興味深い仕上がりだった

「かわいい…」

皆が口々にそう言って手に取る

店先につり下げるとその珍しい花で固めた苔玉は飛ぶように売れていく

店に遊びに来たおかっさまが入るなり食いついた

「あら?これはなんね?かわいかね!根はあるとね?枯れんとやろうか」

そう言いながらくるくる回してみたりしている

「根はありますよ!苔で土を固めてるんです」

「へーっ、帰りに一個もらうけんとっとってね!」

それから苔玉はあっという間に売れてしまったのだ
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