田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
7人の子供を育てるために二人は一生懸命働いた

しかし初五郎は人が良過ぎたようだ

工場が軌道に乗った頃は家族は裕福な暮らしができていた

戦後の混乱から一足先に抜け出したわけである

そんな中食うに困った人々が知り合いでなくとも初五郎の元に金の無心に訪れる

「必ず返します」

「ええ…待ってます」

初五郎は借用書を一切書かなかった

「返してくれたら儲けたい、本当に困っとるやつには別に返してもらわんでもよか!うちは贅沢せんなら食べて行ける…」

シイエも初五郎の考えに文句ひとつ言わなかった

自分達が困った時にはあんなにたくさんの人達に助けられた

二人はそれを忘れてはいなかった
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