田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
そんなある日の事奥様がシイエ達を奥座敷へ呼んだ

二人は何か失敗をしたのだと恐る恐る部屋へ入って奥様の前にちょこんと座った

「シイエちゃん、ヨッコちゃん、だいぶ仕事も覚えたわね?あなたたち学校へお行きなさいな」

奥様の言葉は二人にとって夢のような話だった…まさか学校へ行けるなんて考えたこともなく二人とも顔を見合わせきょとんとしている

あまりの話にうつむいた二人に奥様が聞いた

「どうしたの?二人とも、学校へは行きたくないの」

「いいえ…学校行かれるの嬉しかです、でも私達は奉公人です、学校より田舎にお金ば送らんばけん学校行ったらお金送られんごとなるけん…やっぱり学校はよかです、すいません」

その言葉に奥様は自らの幼い頃を思い出し胸を締め付けられる思いがした

「心配はせんでよか、ちゃんと田舎とも話をしてます…送るお金は少なくなるけどあなたたちが学校へ行ける事を親御さんも喜んでますよ」

「田舎にお金送ってくれるんですか?」

「送りますよ、だから心配しないでうちのおかよと一緒に三人で学校へ行きなさい」

「…神父様とも一生懸命働くって約束したけんね…ヨッコちゃん」

「うん…約束やもん、やっぱ学校は行かんでよか」

「神父様があなたたちが喜ぶことをダメって言うわけがないでしょ!あとは私にまかせなさい」

奥様は立上がり胸を拳でぽんと叩いてにっこり笑った

シイエ達にもようやく笑みがこぼれた
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