田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
その日はとても暑く昼近くなりシイエは義輝にお乳を与えていた

政雄と初義は相変わらず木の上で勉強中

シイエは遠くでサイレンの音を聞いた気がした

「空襲?」

その次の瞬間だ

強烈な光に目がくらみ自分がどこにいるのか…上下の区別がつかないような感覚に襲われた

次第に体に五感が戻る

全身が熱くて重い

思うように動かない体、シイエの上には家で一番太い柱がかぶさっていた

痛みにまた意識が遠くなる

遠くで子供の泣き声がした

シイエはかっと目を見開き指先から少しずつ体を動かしていく

我が子の声だけがシイエを支えた

早く

一秒でも早く

息子の所へいかなければ

シイエは力をふり絞り柱の下から這い出し立ち上がった
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