田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
泣き声を頼りに義輝を探す

確かにそばにいたはずだ

泣き声は床下から聞こえていた

シイエは狂ったように瓦礫を掻き分け義輝を引っ張り出した

まだ生まれて二か月の義輝は首が座っていない

義輝の首は背中につくかというくらいに曲がってしまっていた

慎重に首に手を添えると義輝は大きな声で泣き始めた

政雄は…初義は…はるさんは…

シイエはちからの限り名を呼び続けた

木の上にいた二人が下に落ちうずくまっているのが見えた

シイエはいそいで二人の元へ這っていった
< 82 / 202 >

この作品をシェア

pagetop