田舎の花~原爆を生き抜いたシイエ~
遺体を踏み越え

目玉をぶら下げて走る馬をよけ

ひとつ山をくだり

また山を登り…

4人はようやく立山の病院に辿り着いた

そこは自分らが居た壕より悲惨な状況にあった

片付かない遺体であふれ返り異臭がたちこめる

シイエはここで盗みを働く

ブドウ糖と書かれた点滴の瓶をひとつだけ

息子達が砂糖水が飲みたいと言ったからだ

このまま死ぬことがあるならせめてかなえてやりたい望みだった

人目につかない場所で中身を竹筒に移し息子達と少しずつ飲んだ

砂糖水とはほど遠かったのかもしれないが…

シイエ達には生涯忘れ得ない味となる
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