好きな気持ちが溢れて

今さっき出来上がったのは急かされていたにしても売り物にしていい代物ではなかった

だったら後で言われることもあるだろうけど香織さんのでよかったかもしれない

納得して解けたエプロンの紐を結び直しながら香織さんに言われるだろう後でを思って憂鬱になった


「スネーク邪魔」

さっき同様冷蔵庫の前でうなだれていると後ろから声をかけられた


あぁ、また憂鬱になりそう

独特の呼び方で先取りした暗い気持ちを胸に振り返る

「どけよスネーク」

軽く蹴飛ばされ退いたその道を納品整理している途中で紙袋を両手一杯持つ年下の先輩が通った

「草島さん、俺の名前スネークじゃないんですけど」

訂正の言葉は持っていた袋等が手に食い込み苦痛の入り混じった唸り声を前に消えた

「俺に言ってもらったら手伝ったのに」

追いついて片付けの手伝いをしようとすると私の仕事だからと払いのけられる

多分悪気はない、と思う

草島さんはこういう人

自分で何でも頑張ろうとするから溜め込むタイプなんだって香織さんが言ってた

だからきっと男っ気がないんだ

あ、これは余計だったかな
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