逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
朝になっても、昼を過ぎても、部屋のカーテンは閉めたままで、
まるで1日中が夜のような、そんな暗い部屋の中にいた。
その方が不思議と安心した。
いまのあたしには、光なんていらない。
眩しくて、苦しいだけ。
学校を休み続けて、1週間以上が過ぎていた。
ケータイの電源は切りっぱなしで、コートのポケットの中に入れたままだ。
お葬式の時に担任から、落ちついたら学校に連絡するように言われていたけど、いまだにしていない。
もしかしたら学校から電話が来ているかもしれないけど、ケータイの電源を入れたくなかった。
ケータイが鳴ると、一瞬であの日に連れ戻されて怖かった。
夜中に病院からケータイに連絡があって、お母さんがこの世を去った日。
あの日を思い出すと呼吸が乱れて、胸が苦しくなって、うまく息が出来なくなる。
それが、とても怖かった。
「……っく……ひっく……」
あたしは知った。
胸が張り裂けてしまいそうな痛みも、言葉では表わせないほどの寂しさも。
失って初めて知る深い悲しみは、少しずつあとから押し寄せてくるものなんだと……。
あたしは布団の中にもぐりこみ、星砂のキーホルダーを握りしめて目を閉じる。
どれだけ涙を流しても、涙は止まらなかった。
どれだけ泣けば、悲しくなくなるの……?
どれだけ泣いたら、寂しくなくなる……?
誰か教えて……。
何度拭っても、涙が溢れてくる……。
――ピンポーン……。
その時、インターホンが鳴った。
あたしは布団の中で目を閉じる。
少し間があって、もう一度インターホンが鳴る。
もしかして担任かもしれないけど、いまは誰にも会いたくない。
誰とも話したくない……。
「咲下……?」
ドアの外から聞こえたのは橘くんの声……。