逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
玄関のドアを開けると、夕暮れの空。
制服姿の橘くんがそこに立っていた。
「橘くん」
「ごめん、咲下……どうしてるか気になって」
「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」
あたしはニコッと笑顔を見せる。
「あのさ、これ……」
橘くんは、手に持っていた白いビニール袋をあたしに渡す。
ビニール袋の中をのぞくと、りんごやみかんの果物やプリンなどが入っていた。
「こんなにたくさん?」
「迷惑だったら……ごめん」
「ううん、ありがとう」
もしかして何日も前からあたしの家に訪ねて来てくれていたのは、橘くんだったのかな……。
「何か少しでも飯食ってる?」
「うん。心配させちゃってごめんね」
「咲下の顔が見れただけよかった。じゃあ……また」
「うん、ありがとね……」
手を振ったあと、橘くんの背中を見つめていたら、立ちくらみがした。
視界が揺れる。
ずっと布団の中で横になってて、急に立ち上がったからかもしれない。
早く家の中に入らなきゃ……。
――ドンッ。
「咲下っ!?」
あたしはふらついて、咄嗟にドアにもたれかかった。
橘くんがすぐに駆け寄ってきて、あたしの体を抱きかかえる。
「咲下っ!おいっ、咲下っ!?」
「大丈夫……ごめん。ちょっと立ちくらみしただけ……」
「体熱いけど、もしかして熱あるんじゃ……」
そう言って橘くんは自分のおでこを、あたしのおでこにくっつけた。