逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
橘くんはあたしの体を抱きかかえて、布団まで運んでくれた。
「ごめんね、橘くん……平気だから。帰って大丈夫だよ?」
「熱あるのにほっとけるわけないだろ?タオル借りるからなっ」
そう言って橘くんは、水に濡らしたタオルをしぼって、あたしのおでこの上に乗せた。
「橘くんには……迷惑かけてばっかりだね……」
「そんなことないよ。迷惑だなんて1度も思ったことない」
橘くんは、あたしが寝ている布団のそばに座り、あたしの顔を見つめる。
「咲下のおばさんは……?葬式に来てたよな」
「うん。何日かは、ここに泊まってくれた。でも3日前に帰ったの。仕事もう休めないからって」
「そっか……しばらく咲下のそばにいてくれるんだと思ってた」
「でもおばさんが来てくれたおかげで、お葬式とか必要な手続きとか色々してくれて、すごく助かったよ」
「ん……」
あたしにとって、おばさんはひとりだけ。お母さんの妹。
おばさんは独身で遠くに住んでいて、3日前に飛行機で自分の家へと帰っていった。
お母さんとおばさんは、昔から仲があまりよくなかったみたいで、
あたしがおばさんと会ったのは、小さい頃におじいちゃんのお葬式で会ったのが最後だった。
でもおばさんが来てくれて、本当に助かった。
橘くんの視線の先に気づいたあたし。
「あ、それね……」
橘くんは、床に落ちていた封筒に気が付いた。