逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「いいよ、ここで」
帰る橘くんを外まで見送ろうとしたら、彼に玄関のところで止められた。
「じゃーな」
「ありがと。いつもホントに……」
「ううん。咲下、いつから学校に来る?」
「月曜からはちゃんと行く……」
「そっか、わかった」
――ガチャ……。
ドアを開けた橘くんは、振り返ってあたしに笑顔を見せる。
「じゃ、またな」
「た、橘くんっ」
「ん?」
あたし……橘くんに言わなきゃいけないことあるの。
「どした?」
あたしはうつむき、目をぎゅっと瞑る。
言わなきゃ……。
「咲下?」
顔を上げて、橘くんの顔を見た。
「ううん、なんでもない……また学校でね」
「……ん、わかった」
あたしは手を振って、橘くんを見送る。
――バタン。
玄関のドアが閉まり、あたしはその場に座り込む。
あたし……なんで言えないんだろう。