逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



――1週間後。



橘くんに話したいことを言えないまま、時間だけが過ぎていく。



学校の休み時間、あたしは職員室で担任と話をしていた。



「先生、お願いします」



「あぁ、わかった。本当にそれでいいのか?」



「はい」



「咲下、お母さんを亡くしてつらいと思うけども、頑張るんだぞ」



「……はい」



あたしは先生にお辞儀をして、職員室を出ていく。



“頑張るんだぞ”

“頑張ってね”



お母さんを亡くしてから、先生にだけじゃない。近所の人やお葬式の時もいろんな人にかけてもらった言葉だ。



頑張る……。頑張って生きていく……。



何を頑張ればいいのか、その答えを知りたい。



周りの人は、あたしが落ち込まないように“頑張れ”という言葉で励ましてくれたんだと思う。



ただ、あたしは……そのもっと先を知りたい。



生きていくために、何を頑張ればいいのか。



頑張ってまで、生きていく理由はなんなのか。



その何かを頑張って生きた先には、何があるのか。



その答えはきっと、自分で探すしかない。



それを確かめるために、あたしは……生きていく。
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