逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


街の景色が、涙で滲んで見える。



「……っく……っく……」



泣き声をもらさないように、左手で口元をグッと押さえこんだ。



ねぇ、橘くん……。



どうして、わかったの……?



どうして、あたしを見つけたの……?



どうして、いままでよりも



強くキツく、抱きしめたの……?



力強い腕も。

ぬくもりも。匂いも。

優しい声も。



全部愛しくて。



あの瞬間、あたしは



橘くんと過ごした時間を思い出してた。



もし許されるなら、



時間を止めて



抱きしめられていたかった。



1秒でも長く、一緒にいたかった。



こんなふうに想うのが怖くて、



会わずにサヨナラしようと思ったのに。



強く心に決めたはずなのに。



橘くんの顔を見ると、あたしの心は簡単に揺れ動いちゃうから。



だから怖かったの。
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