逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


橘くんがいない世界で。



橘くんへの想いを閉じ込めて。



これから生きていく。



だから、泣き顔なんかじゃなくて、笑顔で別れたかった。



でも、こらえきれなくて。



涙がこぼれて。



だから電車に乗り込んだら、もう橘くんの方には振り向けなかったの。



これが最後だから……とか。



橘くんには、あたしの笑顔を覚えていて欲しいから……とか。



そんな理由じゃない。



強がってでも、ムリをしてでも。



笑顔を見せて、あたしはもう大丈夫だって、



ひとりで大丈夫だからって、



橘くんに、そう思って欲しかった。



いままでずっと心配してくれたから。



いつも助けてくれて。



一緒にいてくれた。



ひとりじゃ耐えられなかったよ。



つらくて、どうしようもなかったけど。



橘くんがいてくれたから、



あたしはいま、ここにいる。



そう心から思う。



だからもう、あたしのこと心配しないで大丈夫だよって。



最後に笑顔を見せたかったの。



そんなあたしに、橘くんは最後まで優しかった。



彼は、最後に優しい嘘をついた。
< 146 / 528 >

この作品をシェア

pagetop