逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「なぁ、凜……。アイツは凜を引き取ること何も言わずに受け入れてくれた。この家で暮らすからには、アイツとうまくやってくれ」
再婚してるって知ってたら、こんな家に来なかった。
そもそも父親と暮らすことさえ、嫌だったのに。
でも、あたしが行く場所なんて他にないんだ。
どのみち、ここで暮らしていくしかなかった。
あたしは、そういう運命だったんだ。
「あの子にも……まだ小さいから、凜のことはちゃんと話していない。だから……」
「心配しないでください。あの子の前で“お父さん”なんて呼んだりしませんから」
「凜……」
「あなたたちのことは、おじさん、おばさんて……そう呼びますから……」
父親は小さく頷き、階段を下りていった。
いつだってそう。
父親には、いつだって、あたしよりも大切にしたい人がいる。
いまだってそうだ。
あの女の人と、あの小さな子供が大切で、あたしは大切じゃない。
あたしは邪魔者で、おばさんに言われて仕方なく引き取ったんだ。
「……っ」
力が抜けて、あたしは床に座り込む。
あたしに父親なんていない。
とっくの昔に消えたんだ。
わかってたはず。
いまさら、どうってことない。
これくらい、なんてことない。
住む家があって、食べ物があって、学校に行くため。
生きるために、ここにいるだけ。