逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
あたしは、一睡も出来ずに次の日の朝を迎えた。
前の学校の制服に着替えて、階段を下りていく。
リビングの食卓には、3人が座って朝食を食べていた。
幸せそうな家族の姿。
それを横目に通り過ぎて、あたしは玄関へと向かう。
「凜ちゃん、朝食は?」
エプロンをした彼女があたしを追いかけてきた。
彼女が、あたしに対して優しくイイ人を演じているのは、
きっと、この会話を向こうで父親が聞いているからに違いない。
彼女の本性は、昨日一瞬だけ見た。
冷たい瞳で、あたしを……。
「朝食はいいです」
「じゃあこれね。お弁当よ。学校に持っていって」
彼女は笑顔で、あたしにお弁当箱を渡した。
「いいです」
「遠慮しないで持っていって?」
さっきから、この人はずっと笑顔なのに、目が全然笑ってない。
背筋がゾッとする。
「持っていって」
あたしのカバンを勝手に開けて、彼女は無理やりお弁当箱をあたしのカバンに入れた。
「いってらっしゃい」
彼女に見送られて、あたしは玄関を出て行った。
少し歩いたところで立ち止まり、あたしは大きく息を吐き出す。
やっと、ちゃんと呼吸が出来た気がした。
制服のポケットから星砂のキーホルダーを取り出して、ぎゅっと握りしめる。
「橘くん……」
あたしは呟く。
朝の青い空を見上げて、橘くんを想った。
橘くんもこの空を見てる……?
「見てたらいいな……」