逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
転校先の学校までは電車通学。
想像どおり朝は満員電車で、ぎゅうぎゅうに押されて身動きが出来ないまま3駅先で降りた。
改札を出て、昨日、父親に渡された地図を見ながら学校へと向かった。
「えーと……あれ?」
駅から10分ほど歩いた。
どうやら学校へ行く途中で、道に迷ってしまったらしい。
「ここどこ?」
さっきからずっと住宅地を歩いているけど、肝心の高校が見つからない。
地図もわかりにくいし。
あーあ。
転校初日から遅刻するかも……。
交番も見当たらないし、学生も通らない。
どこで間違ったのかなぁ。
この道じゃないの?
見知らぬ人に話しかけるってすごく勇気がいるんだけど……。
だから、どうにか自力で学校に着きたい。
あたしは歩き疲れて、その場にしゃがみ込んだ。
はぁ……。
学校行くのやめよっかな……。
「どしたん?具合でも悪いん?」
顔を上げると、
あたしに声をかけてくれたのは、自転車に乗った制服姿の男子高生だった。
その彼の自転車の後ろには、彼女だろうか。
彼と同じ制服を着た女子高生が乗っていた。
「あ、いえ……もしかして天ノ川高校の生徒ですか?」
「うんっ」
後ろの彼女が笑顔でうなずいた。
「転校初日で、道に迷っちゃって……」
「そーやったんや」
「はい……」
それにしても、この男の子、なんで方言まじりなんだろ……?
どこか地方の出身の人なのかな。
「どっから歩いて来たん?」
「向こうからです」
そう言ってあたしは指を差す。
「ハハッ、逆やけん。3つ先の信号を右に曲がって、公園とファミレス通り過ぎて左。学校まで一緒に行こーや」
「え!?いいです!いいです!」
転校早々、ラブラブなカップルの邪魔するわけにはいかないって。
それにふたりは自転車であたし徒歩だし。
「教えてくれてありがとうございました。あの、どーぞ先に行ってください!本当に!」
「大丈夫なん?」
あたしは大きく頷く。
「ほんだらなー」
そう言って、自転車で走り去っていくカップル。
よかったぁ。親切な人に声かけてもらって。
このままだったら、学校にたどり着けないとこだった。
それにしても、あのふたり……お似合い。
美男美女カップルだったな……。
「……って、ぼんやりしてる場合じゃない!あたしも急がなきゃ」