逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


「もう詩の話は、おしまい!」



そう言ってあたしがノートをカバンの中にしまうと、彼は言った。



「……いつか見せて」



「え……?」



「凜の自信作が出来たらでええけん」



「……じゃあ……考えとく」



陽太くんはニコッと笑った。



初めて書いた詩は、いまでも覚えてる。



だけど、中学の頃。



そのノートをどこかで無くしてしまって、すごくショックだった。



あたしのいろんな想いが詰まったノートだったから……。



「凜」



「なぁに?」



「凜の前の学校の制服は、リボンやったんやね」



「あーうん。新しい制服が間に合わなくて、しばらく前の制服で通うの」



この高校の制服は、男子も女子もネクタイだった。



「リボンがよかったなぁ。だってあたし……ネクタイの結び方とかわかんないもん……」



「覚えたら簡単や」



彼の両手がすっと伸びてくる。



彼は、あたしのブラウスの襟元に触れ、リボンを外した。
< 176 / 528 >

この作品をシェア

pagetop