逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「な、なに!?」
そして彼は自分の首元のネクタイをゆるめて、スルッとネクタイを取る。
「ネクタイの結び方。教えるけん」
「い、いいってば」
「ほら、じっとしぃ。よく見とって」
彼はあたしのブラウスの襟を少し持ち上げて、首元にネクタイをかける。
ネクタイの端と端を持って、彼はゆっくりと結んでいく。
「こうで、ここはこう……どうや?簡単やろ?」
「まぁ……はい」
「その顔は、わかっとらん顔やな」
彼はイスから立ち上がって、あたしの後ろに立った。
あたしの体を後ろから包みこむようにして、彼の両腕が前にくる。
「こうすれば、向きも同じで凜もわかりやすいやろ」
彼はあたしの手とネクタイを一緒に持って、もう一度ネクタイをゆっくりと結んでいく。
ふわっと……陽太くんの、いい香りがした。
石鹸とフルーツがまざったような、爽やかな香り。
「どう?覚えた?」
「あ、ありがと。覚えた」
あたしが横を向くと、陽太くんの顔が目の前にあった。