逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「情報、少なっ!」
「んー。あとは前に、咲下の家で父親から来た手紙を見つけて……でも一瞬しか住所のとこ見なかったからハッキリ覚えてなくてさ」
こんなことなら、あのときの手紙の住所、よく見ておけばよかった。
「連絡も取れない、どこに住んでるかもわかんないときた。もう会えねぇじゃん」
くぼっちは胸の前で腕を組み、ため息をついた。
「逢いに行くときが来たら、なんか方法考えるよ。それに最後まで諦めんなって言ったのは、くぼっちだろ?」
「そーだな。諦めたらダメだよな!わかった。そのときは俺も一緒になんか方法考えてやんよ」
「さんきゅ」
「それにさ、橘……」
「ん?」
くぼっちは、いつのまにか俺の星砂のキーホルダーを手に持っていた。
「もし運命の人なら、きっとまた逢えるよ」
そう言ってくぼっちは微笑み、俺にキーホルダーを渡した。
「出た。くぼっちのクサイ台詞」
「おーまーえー!なんだよ、励ましてんのにっ」
俺は前にくぼっちが言った言葉を思い出していた。
“マジで!?同じキーホルダー買うとか、どんだけ奇跡だよ?”
“おまえら運命の赤い糸で結ばれてんじゃねーの?”
「橘、なにひとりで笑ってんだよ?」
「いや、元気もらったわ」
「うそつけ!バカにしてんだろ?笑ってんじゃんか」
「笑ってねぇーって」
教室に笑い声が響きわたる。
この街に。
この教室に。
咲下がいないことに、俺はまだ慣れてなんかない。
咲下……。
どうしてる?
いまこの瞬間も
……咲下に逢いたい。