逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
――――――……
2月中旬。
「はぁ……さみぃ」
白い息を吐きながら、朝、通学路を自転車で走っていく。
自転車の後ろ。
振り返っても、そこに咲下はいないこと……わかってる。
咲下を乗せて、何度この道を走っただろうか。
朝、一緒に学校へ行ったり。
病院から家まで送ったり。
笑ってる咲下の顔も。
泣いてる咲下の顔も。
目を閉じると浮かんでくる。
自転車の後ろ……感じていた重み。
失って気づいた、大切なもの……そのひとつだった。
咲下が利用していたバス停を、横目に通り過ぎていく。
もうここに咲下はいないのに。
それでも彼女の欠片を探してしまう。
俺の日常は、自分で思うよりずっと。
咲下でいっぱいだったんだ。