逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


「あ、ごめんっ」



そう言って吉野は、俺の指を掴んだまま微笑んだ。



「先に使っていいよ」



「ううん、橘くんが先に使って?」



俺はノートの間違えた文字を消して、吉野に消しゴムを渡す。



「はい」



「ありがとっ」



吉野は消しゴムを握りしめて、俺を見つめる。



「ん?」



「前から思ってたけど橘くんて……」



「なに?」



「ううん、やっぱりいい……」



吉野は何かを言いかけてやめる。



「ふっ……なんだよ?」



俺が聞くと、吉野は少し哀しげに微笑んだ。



「橘くんて誰に対しても同じ態度だし……優しいけど……」



俺の目を真っ直ぐに見つめて吉野は言った。



「本当は誰にも、心を開いてないよね……?」
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