逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
電車の中に、彼の姿を見つけた。
ドアのそばに立っていた彼と、視線がぶつかり、あたしたちは見つめ合う。
「橘くん……」
彼は一緒にいた頃のような笑顔を、あたしに向けてはくれなかった。
微笑んではいるのに、どこか哀しげな瞳で、あたしのことを見ている。
そんな彼を、あたしもただ見つめ返すことしかできなくて。
胸が締めつけられるように苦しかった……。
彼の姿は、少しずつ遠ざかっていく。
橘くんが見えなくなっていく。
「……っ」
泣きそうになって声をつまらせた。
あたしは自分の胸のあたりをぎゅっと掴み、彼の名前を呼ぶ。
「橘くん……っ!」
大声で叫んでも。
君にはもう……届かない。
その場に立ちつくすあたしは、遠く離れていく電車を見つめていた。
踏切の音が鳴り止み、遮断機が上がる。
あたしを後ろから抱きしめていた陽太は、腕の力を緩める。陽太は腕をゆっくりと下におろした。
電車が見えなくなり、あたしはその場に座り込んだ。