逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「凜っ」
陽太はあたしの前にしゃがみこみ、あたしの両肩を強く掴んだ。
「大丈夫か?」
そう言って、陽太はうつむくあたしの顔を覗き込む。
「……うん、平気。ごめん」
橘くんが……遠いこの街まで、あたしに会いに来てくれた。
あたしを心配して、ここまで来てくれたの……?
半年前、あたしがあの街を離れるとき、橘くんは言ってくれたね。
“いつかまた……逢えるよな?”
あの日、橘くんはあたしのために、最後の優しい嘘をついてくれたんだと思った。
それが、優しい彼のサヨナラの言葉だと思った。
だけど、違ったんだね。
あれは嘘なんかじゃなくて、サヨナラの言葉でもなかった。
本当に逢いにきてくれるなんて思わなかったよ。
ずっと、橘くんに逢いたかった……。
逢いにきてくれて、ありがとう。
ありがとう……橘くん……。
涙がこぼれ落ちそうになるのを必死にこらえた。
「陽太……」
「なん……?」
「もう行って?部活だって、とっくに始まってる……」
「ええけん。どうでもええよ」
これ以上、涙をこらえられない。
陽太の前で、泣きたくない……。
あたしは陽太から顔を背ける。
「アイツが……前に言うとった、凜の片想いの相手……?」