逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



「凜っ」



陽太はあたしの前にしゃがみこみ、あたしの両肩を強く掴んだ。



「大丈夫か?」



そう言って、陽太はうつむくあたしの顔を覗き込む。



「……うん、平気。ごめん」



橘くんが……遠いこの街まで、あたしに会いに来てくれた。



あたしを心配して、ここまで来てくれたの……?



半年前、あたしがあの街を離れるとき、橘くんは言ってくれたね。



“いつかまた……逢えるよな?”



あの日、橘くんはあたしのために、最後の優しい嘘をついてくれたんだと思った。



それが、優しい彼のサヨナラの言葉だと思った。



だけど、違ったんだね。



あれは嘘なんかじゃなくて、サヨナラの言葉でもなかった。



本当に逢いにきてくれるなんて思わなかったよ。



ずっと、橘くんに逢いたかった……。



逢いにきてくれて、ありがとう。



ありがとう……橘くん……。



涙がこぼれ落ちそうになるのを必死にこらえた。



「陽太……」



「なん……?」



「もう行って?部活だって、とっくに始まってる……」



「ええけん。どうでもええよ」



これ以上、涙をこらえられない。



陽太の前で、泣きたくない……。



あたしは陽太から顔を背ける。



「アイツが……前に言うとった、凜の片想いの相手……?」
< 278 / 528 >

この作品をシェア

pagetop