逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



陽太の言葉に、あたしは顔を背けたまま小さく頷く。



泣くな、あたし……。



陽太の前では笑ってなきゃ。



あたしは陽太に笑顔を向けた。



「もう二度と会えないと思ってたから……ホント、びっくりしちゃった」



涙をこらえて、無理にでも笑顔を見せる。



「前、俺に言いよったよな、凜はアイツのそばにおったらいかんて。何がいかんの?」



あたしは何も答えずに微笑む。



「言いたぁないんなら別に言わんでもええよ。やけど……」



陽太はあたしの肩から、そっと手を離した。



「アイツも凜のこと想っとるんやない?やけん、会いに来たんやろ……?」



「ううん……。橘くんは……」



橘くんはきっと……あたしを心配して来てくれたんだと思う……。



お母さんのことがあったとき、ずっとそばで見守っていてくれた人だから。



お母さんが死んじゃってすぐ、あたしがあの街を去ったから。



だからきっと……。



“いつかまた……逢えるよな?”



その言葉を、守ろうとしてくれたんだよね。



「アイツに会いたいんなら、今度は凜が会いにいけばええやろ?」



あたしは首を横に振った。



陽太はあたしの過去を知らない。



陽太は本当のあたしを何も知らない。



陽太には何も知られたくなかった。



「会いたいんか、会いたくないんか……どっちなん?」



「ときどき、自分でもわかんなくなる……」



本当は、わかってる。



会いたい。会いたくない。



そのどっちもだってこと。



頭と心が、別々だった。



どうしたら心は、言うことを聞いてくれるの?



頭で考えることを、心が素直に言うことを聞いてくれたら。



頭と心が同じ気持ちなら。



こんなに苦しい思いしなかったのかな……。
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