逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
学校からの帰り道、陽葵ちゃんと彼氏が昨日の夜に大ゲンカした話を聞かされていた。
どうやら、陽葵ちゃんの彼氏は束縛が激しいらしい。
「陽葵のケータイ勝手に見よったんよ。ありえんよね。陽葵のこと信じてないんよ」
普段は大人っぽくて冷静な陽葵ちゃんだけど、今回に関しては、だいぶお怒りの様子。
「クラスでも男子と普通に話しとるだけやのに、すぐ機嫌悪うなるし」
「陽葵ちゃんが可愛いから、彼氏はきっと心配なんだよ」
「男女共学やもん。普通に話すやろ?男と話すなとか言いよるんよ?ムリやろ。疲れるわ!」
「ふふっ。同じクラスで付き合ってるのも、けっこう大変なんだね」
「やけど、凜ちゃんに話してスッキリしたわ。クラスの女友達に話すと、たまに彼氏に伝わっとる場合があるんよね」
「あたしでよかったら、いつでも話聞くよ?経験ないから、アドバイスとかはできないけど」
「ありがとう、凜ちゃん」
陽葵ちゃんは、あたしの腕にぎゅっとつかまった。
「凜ちゃん、もう帰らんといかん?少しカフェ寄っていこーや」
「うん、いいよっ」
あたしたちが寄り道したのは、駅の近くにあるオシャレなカフェ。
窓際のテーブル席に、向かい合って座った。
あたしはアイスティーとイチゴのロールケーキ、陽葵ちゃんはアイスカフェラテとミルクレープを頼んだ。
「凜ちゃん。はい、これ……」
そう言って陽葵ちゃんは、カバンの中から大きな封筒を取り出してテーブルの上に置いた。
「なに?これ……」
「陽葵も何が入っとるんかは聞かんかった……」
どういうこと……?この封筒は誰の物……?
「昨日凜ちゃんに会いに来よった……橘くんやっけ?彼に頼まれたんよ。凜ちゃんに渡して欲しいって……」
橘くんが……あたしに……?
一体、なんだろう。
あたしが封筒に手を伸ばすと、陽葵ちゃんは聞いた。
「ねぇ、凜ちゃん」
「ん?」
「凜ちゃんは、お兄ちゃんと付き合っとるんやないん?」