逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



昨日、橘くんを追いかけていったあたしを見て、陽葵ちゃんはきっと気づいたんだ。



あたしの橘くんへの気持ち……。



「ごめん、凜ちゃん……」



「え?なんで謝るの?」



「凜ちゃんは、てっきりお兄ちゃんと付き合っとるって思っとったけん。陽葵、橘くんに余計なこと言うた」



「余計なことって……?」



「お兄ちゃんと凜ちゃんが付き合っとるって、橘くんに言うてしもうたんよ」



申し訳なさそうな顔で謝る陽葵ちゃんに、あたしは微笑む。



「そっか……別にいいよ」



「え?やけど……」



「大丈夫。橘くんがどう思ってもかまわない。たぶん、もう逢うこともないだろうし」



「何があったん……?」



陽葵ちゃんは哀しげな瞳で、あたしの顔を見つめる。



「何もないよ」



「凜ちゃん、橘くんのこと好きなんやろ?橘くんも凜ちゃんのこと、好きやと思う。やけん、遠くまで逢いに来たんやろ……?」



あたしは首を横に振った。



「橘くんは優しい人なの。あたしを心配して逢いに来てくれたんだと思う」



「凜ちゃん……」



「それか、この近くに用事でもあったんじゃないかな?じゃなきゃ、わざわざ来ないよ。こんな遠くまであたしに逢いになんか……」



「何でなん?凜ちゃん……」



「え……?」



「何で橘くんの気持ちまで、気づかんフリしよるん……?」



陽葵ちゃんは、気づいてた。



「想い合っとるのに、どうして遠ざけるん?何が凜ちゃんにそうさせるん……?」



陽葵ちゃんには、嘘をつけなかった。
< 285 / 528 >

この作品をシェア

pagetop