逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
昨日、橘くんを追いかけていったあたしを見て、陽葵ちゃんはきっと気づいたんだ。
あたしの橘くんへの気持ち……。
「ごめん、凜ちゃん……」
「え?なんで謝るの?」
「凜ちゃんは、てっきりお兄ちゃんと付き合っとるって思っとったけん。陽葵、橘くんに余計なこと言うた」
「余計なことって……?」
「お兄ちゃんと凜ちゃんが付き合っとるって、橘くんに言うてしもうたんよ」
申し訳なさそうな顔で謝る陽葵ちゃんに、あたしは微笑む。
「そっか……別にいいよ」
「え?やけど……」
「大丈夫。橘くんがどう思ってもかまわない。たぶん、もう逢うこともないだろうし」
「何があったん……?」
陽葵ちゃんは哀しげな瞳で、あたしの顔を見つめる。
「何もないよ」
「凜ちゃん、橘くんのこと好きなんやろ?橘くんも凜ちゃんのこと、好きやと思う。やけん、遠くまで逢いに来たんやろ……?」
あたしは首を横に振った。
「橘くんは優しい人なの。あたしを心配して逢いに来てくれたんだと思う」
「凜ちゃん……」
「それか、この近くに用事でもあったんじゃないかな?じゃなきゃ、わざわざ来ないよ。こんな遠くまであたしに逢いになんか……」
「何でなん?凜ちゃん……」
「え……?」
「何で橘くんの気持ちまで、気づかんフリしよるん……?」
陽葵ちゃんは、気づいてた。
「想い合っとるのに、どうして遠ざけるん?何が凜ちゃんにそうさせるん……?」
陽葵ちゃんには、嘘をつけなかった。