逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
吉野の家の前に着いた。
俺は周りをキョロキョロと見まわし、怪しいヤツがいないか確認する。
自転車から降りた吉野は、俺のそばに立ち、
俺の服の袖を指先できゅっと掴み、うつむく。
「橘くん……」
「ん?」
「……うちに上がっていかない?」
吉野は顔を上げて、俺の目を見つめる。
「もう少しだけでいいから、一緒にいてくれないかな……?うち、親が帰ってくるの遅くて……ひとりじゃ……今日は怖い……」
暗い夜道、知らない男に後をつけられて怖かったと思う。
不安げな表情の吉野を置いてそのまま帰ることはできなかった。
「……そうだよな。ん……わかった」
「ありがとぉ。ごめん」
「いーよ。落ちつくまでいる」
俺は自転車を吉野ん家の門の前に止め、吉野と一緒に家の中に入っていく。