逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「何か飲み物持ってくるね、座ってて」
そう言って吉野は、俺を2階の吉野の部屋に残して階段を下りていった。
俺はベッドを背にして、床に腰を下ろす。
吉野の部屋は、ピンク色の小物や家具が多く、ぬいぐるみが置いてあったりと、女の子らしい感じの部屋だった。
少しして、階段を駆け上がってくる足音が聞こえる。
「オレンジジュースでよかった?」
ジュースの入ったふたつのコップをそれぞれ両手に持って、吉野が部屋に戻ってきた。
俺は座ったまま吉野からコップを受け取る。
「うん、ありがとな」
「それはこっちのセリフだよ。橘くんがいてくれてホント心強い」
吉野は俺の隣に腰を下ろして、微笑んだ。
「橘くんが来てくれなかったら、いまごろ……」
「友達が困ってたら、助けるのはあたりまえだろ?」
吉野はうつむき、自分のコップを床にそっと置いた。
「そうだよね……。友達だから、助けてくれたんだよね……」
吉野は目を伏せて、小さな声でつぶやく。
「え?聞こえなかった。いま何て……?」
そう言って俺が聞き返すと、吉野は顔を上げて俺のほうを向いた。
「橘くん」
「ん?」
「橘くんの心の中には、いまも咲下さんしかいないの……?」