逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


駅までの道の途中、ふと不動産屋の前で立ち止まる。



不動産屋の大きな窓に貼られた賃貸アパートの間取りと家賃が書いてあるたくさんの紙。



「ひとり暮らし……したいなぁ」



高校を卒業して、もう子供じゃないって思ったけど。



未成年のあたしじゃ結局、小さなアパートさえも保証人がいなくちゃ借りられない。



父親に保証人になってもらうなんて嫌だし、きっと頼んでも保証人にはなってはくれないだろう。



父親は大学進学を希望していたのに、あたしは最後まで父親の言いなりにはならなかった。



あの家を出ていくには、やっぱり住み込みで働けるバイトを見つけるしかないんだ。



頑張らなきゃ……。



自立して、ひとりでもちゃんと生きていけるように。



「よしっ!がんばろっ」



不思議と希望に満ちていた。



新しい道へと進んでいく。明るい世界へと向かってる。



そう信じて疑わなかったんだ。
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