逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
そのあと、あたしはバスに乗って北十字病院に向かった。
入院しているのは、お母さんがいつも薬を処方してもらっている精神科の病院とは違う病院だった。
お母さんの病室は、2階の4人部屋だと病院の受付で教えてもらい、薄暗い階段を上がっていく。
ここは精神科ではなく、内科病棟だった。
お母さんは離婚してから、いままでも何度か体調を崩すことがあった。
でも病院に入院するなんてことは初めてのことで、あたしはいま不安な気持ちに押し潰されそうになっている。
お母さんのいる4人部屋の病室は、ドアが開けっぱなしになっていた。
「お母さんっ」
「凜……」
病室のベッドにお母さんは横になっていた。
具合の悪そうなお母さんの姿を見て、あたしは泣きそうになってしまう。
「お母さん、大丈夫なの?」
「平気よ」
全然平気そうに見えないよ……。
あたしはベッドの横のイスに座り、お母さんの左手を両手で握り締める。
「心配いらないって電話で言ったでしょ?」
そうお母さんは言うけど、不安でたまらない。
「心配に決まってんじゃん。どっか悪いから検査するんでしょ?」
「すぐに退院できるわ。大丈夫よ、凜……」
「お母さん……」
「お母さんがいなくても、ちゃんとご飯も食べて休まずに学校へ行ってね」
あたしの心配より、自分の心配してよ……。
普段はこうやって、あたしの心配ばかりする優しいお母さんなんだ。
だから、たまにお母さんの様子がおかしいと感じても、またすぐに優しいお母さんに戻ってくれるってわかってた。
お母さん……大丈夫だよね?
きっと、今回も。
すぐに元のお母さんに戻るよね?