逢いたい夜は、涙星に君を想うから。

・夜明け





――――――……



橘くんは、あたしの手を強く握ったまま離そうとしなかった。



彼をここで一緒に死なせるわけにはいかない。



それでもあたしは、もうダメかもしれないと何度も感じた。



そんなあたしを励ましながら、彼は最後まで諦めようとしなかった。



宙にぶら下がっていたあたしは、彼の言うとおりにゴツゴツとした岩肌に足をかけて、何度もすべりそうになりながら、ゆっくりゆっくりと彼に引き上げられた。



崖の上に這い上がった途端に力尽きたふたりは、その場にあおむけで倒れ込んだ。



息が上がる中、瞳に映った景色は綺麗な星空。



あの日の、切なく儚い一瞬の記憶と同じ星空。



あたしにとっては、この世界でいちばん美しい景色かもしれない。



あたしのそばで倒れていた橘くんは、手を握ったまま「よく頑張ったな」と言ってくれた。
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