逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




――――――……



俺はダイニングルームから咲下を連れて、2階の奥にある自分の部屋に向かった。



「この部屋、俺ひとりで使わせてもらってるんだ。入って」



咲下は部屋の前で立ち止まったまま動かずに俺を見つめる。



「オーナーにはちゃんと話したから、気にしないでいいよ」



俺は咲下の手をとって、部屋の中に入っていく。



「元は客室だった部屋をいまはスタッフの部屋にしてるからさ。きれいな部屋だろ?」



そう言って俺は、咲下をベッドの上に座らせた。



「ベッドもふたつあるから、ここで休みな」



咲下は口を開けて動かした。口元を見ていると“ごめんね”そう言った気がして、俺は微笑む。



声が出なくても、彼女の気持ちは表情や様子から、なんとなくわかる。



だけど咲下は声が出なくて、どれだけつらいだろう。



咲下の気持ちを考えると、どうしようもないくらい胸が締め付けられそうだった。



「床、段ボール箱だらけでごめんな。卒業式のあと、すぐにこっち引っ越してきたんだけど、なかなか片付けが進まなくてさ」



俺は冷蔵庫からジュースの入ったペットボトルを出し、それを咲下に渡した。



――コンコン。



部屋のドアをノックする音が聞こえ、ドアを開けると翔さんが部屋にご飯を持ってきてくれた。



「これ彼女に。夕飯の残りだけど」



「翔さん……ありがと」



「早く元気になるといいな。何かあったら、いつでも言えよ?じゃ……」



俺にご飯と救急箱を渡して、翔さんは階段を下りていく。



翔さん……。



何から何まで本当にありがとう。



感謝してるよ。
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