逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




床の上に座って、ご飯を食べる咲下。



あまり食欲がないみたいだったけど、ご飯を持ってきてくれた翔さんに申し訳なく思ったのか、一生懸命ご飯を口に運んでいた。



「オーナーの料理、どう?お客さんにもすっごく人気なんだ」



そう俺が言うと、咲下はうなずいて俺の顔を見る。



「おいしい?」



咲下はもう一度うなずいて、少しだけ微笑んだように見えた。



「そっか、よかった……」



ご飯を残さず食べ終えた咲下は、救急箱を手に取って俺を見つめる。



「え?傷の手当してくれんの?」



俺が聞くと彼女はうなずく。



「俺が先に咲下の傷の手当てする」



そう俺が言うと彼女は救急箱を持ったまま、首を横に振った。



「俺はたいしたことないから平気」



俺は床の上の彼女を抱き上げ、ベッドの上に座らせた。



救急箱を開けて、傷の手当を始める。



「最初はヒザから……だな」



彼女の白く細い足を手で押さえ、擦りむいている膝にそっと息を吹きかける。



「大丈夫か?」



咲下は小さくうなずいた。



彼女の体に出来たたくさんの傷は、



こうして手当をして、いつかは傷跡も時間とともに消えるだろう。



でも、彼女が抱える心の傷は、どれだけ深く刻まれているのだろうか。



心の傷を癒して、傷跡も残さずに消してあげたいと思うのに。



その方法が、わからない。



もし俺が見つけなかったら、咲下は今頃この世界からいなくなっていたかもしれないと思うと、怖くてたまらなかった。



俺はうつむき、彼女の足の傷に絆創膏を貼りながら、溢れてくる涙を歯を喰いしばって必死にこらえていた。
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