逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




咲下の瞳に涙が溢れ、俺は咲下の頭をそっと撫でた。



「そっか……逢いたいよな……逢いたくて、どうしようもないときもあるよな……?」



うつむく咲下は、涙を流しながら何度もうなずく。



母親が死んでから、まだ1年と少ししか経っていないんだ。



あれほど大切に思っていた母親を失って、その悲しみやつらい気持ちが、そんな簡単に消えるはずがない。



この世界からいなくなってしまった人に。



死んでしまった人に、どうしても逢いたくなったら。



どうすればいい……?



もう逢えないって言い聞かせても、どうしようもなく逢いたいときもあると思うんだ。



もう二度と逢えないのか……?



絶対に逢えないのか……?



咲下はもう、どんなに逢いたいって思っても、お母さんに逢えないのか……?



うつむき涙を流して肩を震わせる咲下を見ているだけで、胸が張り裂けそうだった。



……咲下のお母さんも



きっと……俺と同じ気持ちですよね……?



「なぁ……咲下」



……いま、彼女のことを見つめていますか?



「咲下がお母さんのことを思い出すときって……お母さんの方から咲下に逢いに来てくれてるんじゃないかな……」



咲下はゆっくりと顔を上げる。涙で頬が濡れていた。



「俺はそう……思うんだけど……」



咲下が寂しくて、逢いたくて、お母さんのことを思い出すんじゃなくてさ。



きっと……お母さんが咲下のところに逢いに来てくれてるから、咲下はお母さんのことを想ったり、思い出すんじゃないのかな。



咲下がお母さんのことを想ってるときは、いつもお母さんがそばにいるんだ。



きっと今でも……そうやって咲下は、お母さんに逢ってるんだよ。



お母さんは、いつもそばに逢いに来てくれてる。



俺はそう思うよ。
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