逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
「ありがとう、翔さん。でも……」
俺は、ズボンのポケットの中に手を突っ込んで、彼女が残したメッセージの紙をクシャッと握りしめる。
「いまは、彼女の気持ちをいちばんに考えたいって思って」
翔さんは俺の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「そっか……」
「……でも本当は、どうすれば後悔しないのか、何が正解なのか。迷ってる自分がいて。俺はいつだってそうなんです。情けないなって自分でも思うけど」
「後悔なんてものはさ、どんな答えを出しても多かれ少なかれ必ずするもんなんだよ」
そう言って翔さんは、卵焼きを箸でつまみ、俺のご飯の上に乗せてくれた。
「たださ、自分じゃない誰かの幸せを心から願うほど、誰かを好きになれるって、一生のうちになかなかないことだよ」
そう言って翔さんは微笑む。
「好きな人のそばにいるのも、そばにいられなくても幸せを願うのも、人を想う気持ちには、いろんな愛の形があると思う」
いろんな……愛の形……。
「琉生があの子を想う気持ちは、全部どれも間違ってない。俺はそう思うけどな」