逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
――――――……
午前9時過ぎ。
晴れ渡る空の下、心地いい風が吹いていた。
俺と翔さんはペンションの前で、宿泊した中年のご夫婦をお見送りする。
「ありがとう。おかげで妻と楽しい旅ができました」
そう言って荷物を受け取ったご夫婦の笑顔を見て、俺はうれしい気持ちになり、胸が温かくなる。
「素敵なご夫婦に出逢えて、お話もたくさん聞けて楽しかったです」
そう笑顔で話す翔さんは、小さな紙袋をご夫婦に渡した。
「よかったら。手作りのジャムです」
翔さんは、ペンションに宿泊したお客様にお土産として手作りのジャムを渡している。
「ここを選んでよかったわ。お料理もすごく美味しかった。またお世話になりますね」
そう奥さんが言うと、翔さんは微笑んだ。
「ありがとうございます。いつでも遊びに来てください。お待ちしています」
翔さんの言葉に笑顔で頷き、車に乗り込んだご夫婦。
その車が走り去っていくのを見つめながら、俺と翔さんはいつまでも手を振り続けた。
「……翔さん」
「ん?」