逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




「ここで働かせてくれて、ありがとっ」



「ふっ……どうしたんだ?急に」



「お客さんを見送るとき、いつも思うんですよね。笑顔で帰っていくお客さんを見て、あー、この仕事やってて本当によかったなって……」



俺の言葉に、翔さんは白い歯をニッと見せて笑う。



「俺もだよっ。琉生」



俺は空を見上げた。太陽の明るい光に目を細める。



「翔さんは、人生って最初から決まってるものだと思います?」



「……どうだろうなぁ?俺も琉生くらいの年頃のときは、そんなことをよく考えたよ」



「高校の夏休みにここへバイトに来なかったら、翔さんが俺を誘ってくれなかったら……俺はきっと、この仕事をしていなかっただろうなって」



過去の行動が、いまを作っている。



もし、あの日、あの時。



俺がほんの少しでも違う行動をしていたら。



違う選択をしていたら。



俺は、いまとは全く別の人生を歩んでいたのかもしれない。



そう考えると、人は



本当にちょっとしたことで、人生が変わっていくんだなって思う。



それとも、最初からすでに人生は決まっていて、



すべてはそうなるように、導かれているのだろうか?
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