逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
――――――……
午前10時過ぎ。ペンションの前。
翔さんと咲下と俺は、荷物を持ったくぼっちたちを見送る。
「じゃあな」
「寂しいよぉ~琉生く~ん」
くぼっちは、俺に抱きついて離れない。
「はいはい。よしよし。俺も寂しいよ」
そう言って俺は、くぼっちの背中を優しく叩いた。
「おい、棒読みもいいとこだろ。気持ちが全然こもってねぇ」
「アハハッ……久しぶりに会えてうれしかった」
「俺も。また電話するよ、橘」
くぼっちは俺の体から離れて笑顔を見せる。
「なに?くぼっち……ニヤニヤして」
「昨日の夜、なんかいいことあった~?」
「はっ!?な、な、なん……」
「……あったんだな?わかりやすいなぁ~琉生くんは~」
俺は慌ててくぼっちの口を手で塞いだ。
「じゃ、お世話になりました~」
そう言って、くぼっちの友達3人は翔さんと咲下に手を振って先に歩き出す。
あれ……?
昨日はやけに咲下と親しげにしていた男も、ずいぶんあっさり帰って……。
……そういうことか。
「俺をハメたな?くぼっち」
「え?なんのことかしら~?」
俺にヤキモチをやかせようと……わざと仕組んだな。
「俺のおかげで愛が深まっただろ?」
「ぶっ飛ばすぞ?」
「なんでだよぉ~」
走って逃げながら、手を振るくぼっち。
「またな~!ふたりともお幸せに~っ」
そう叫んだくぼっちは、先に歩いていた友達の元へと走っていった。
「……ったく」
くぼっちのやつ。
「気をつけて帰れよ~!またな~」
そう叫んだ俺は、くぼっちに大きく手を振った。
久しぶりに会えてうれしかったよ。
くぼっち……元気でな。