逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
――――――……
ある日の午後。
少し遅い昼食をとった後、庭で使用する木のテーブルを作るため、オーナーと橘くんは工具を片手にペンションの庭で作業をし始めた。
あたしは、今夜ペンションに宿泊するお客さんが到着するまで休憩していいと言われて、ひとり2階の部屋に戻った。
開けっ放しの窓から、部屋の中に心地いい風が入ってくる。
穏やかな波の音を聞きながら、
ベッドの上にうつぶせになったあたしは、枕の下に隠していたノートを取り出した。
ペンを持ち、ノートを開く……。
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いつか、橘くんに話したい……。
今までのこと全て。
声が元通りになったら、
ちゃんと自分の口から……。
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でも……もし、この先ずっと。
あたしの声が元通りにならなかったら。
そのときは……このノートを君へ……。
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あの日、ここを去る時の私は、
眠っている橘くんを見つめて思いました。
“もう二度と、ここには戻れないかもしれない……”
心の中でその覚悟を決めると、
小さな紙に橘くんへのメッセージを残し、
部屋から出て行きました……。
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ペンを動かす手を止めたあたしは、目を閉じて、
あの日を思い出していた――。