逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
橘くんのそばに。
あたしは……ずっと、ここにいたかった。
“ここで俺と一緒に暮らそう”
そう言ってくれた彼と離れたくなかった。
それでも……あの日、
あたしはどうしても、行かなきゃならなかった。
あたしは橘くんを起こさないように、ベッドから静かに降りた。
メモ用紙とペンを探して、
床の上でうずくまり、あたしは涙をこぼしながら、
震える手で、小さな紙にメッセージを書いた……。
“橘くんへ。
眠ってる間にいなくなって、ごめんなさい。
言葉じゃ足りないけど、ありがとう。
橘くんは、私の光だった。
私の願いは、橘くんの幸せです。”
それが、あの日……
あたしが言える精一杯の想いだった。
橘くんの寝顔を見つめて思った。
これが、最後になるかも。
もう二度と、逢えないかも。
いつ戻って来られるかもわからないのに、
待ってて欲しいなんて……
そんなこと……
勝手なことばかり言えなかった。
だから、ここにはもう戻れないかもしれない……。
部屋を出ていくとき、そんなふうに思った。
ペンションを出て、歩いていく間もずっと、
涙が止まらなかった……。