逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
タクシーの中で、窓の外の流れる景色を見ながら思っていた。
あたしは、この街から離れられないかもしれない。
橘くんの元にはきっと戻れない……そんな気がしていた。
父親が救急車で病院に運ばれた理由もわからず、不安だけが募っていった。
たいしたことなければいい。
だけど、たとえば……何か病気だったり、事故に遭ってケガをしてしまったら。
誰かが父親の世話をしなければならない。
彼女があたしに連絡してきたのは、父親の面倒を見るつもりがないからだと、あたしは思っていた。
彼女は、のえるを連れて家を出て行ったばかりだった。
もちろん、父親の行いが悪いせいだし、責めるつもりなんてない。
けど、彼女が父親とやり直すつもりがないとしたら。
もし父親に何かあったら。
父親を世話する人は、あたししかいない……そう思った。
正直、怖かった。
もしかして……あたしは一生、父親から逃れられないのかも。
この街から離れられないのかもって。
あたしは結局、狭い世界から逃げ出せないんだって。
そんなことばかり、考えていたんだ。