逢いたい夜は、涙星に君を想うから。




いままで何度も。



大切な人を失うたびに、傷ついた。



どれだけ傷ついても、傷つくことには慣れなかった。



“大切な人は、あたしのそばからいなくなる”



だから、ひとりでいい。



大切なものを作らなければ、失わずにすむ。



そう思ってた。



でも、あの頃そう思えたのは、あたしにはお母さんがいたからだった。



お母さんだけはずっと、あたしのそばにいてくれるって信じて疑わなかった。



だけど、あたしは本当にひとりぼっちになった。



お母さんを亡くして、あたしには家族と呼べる人はいなくなった。



あの時のあたしは、どん底にいるような気がして何も見えなくなって。



傷つくことが怖くて、逃げていた。



失うことが怖くて、自分の気持ちに素直になれなかった。



橘くんへの想いを忘れようと何度も思った。



大切に思えば思うほど、失うことを先に考えてしまうから。



あんな思いは、もう二度としたくない。



もう何も、誰も……失いたくなかった。



だけど橘くんは、いつもどんなときも。



諦めずに、あたしを見つけてくれた。



命をかけて、助けてくれた。



そして、大切なことをたくさん教えてくれた。
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