逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
彼に抱き締められたまま泣いてるあたしは、声を震わせて呟いた。
「……橘くん」
声を失った日から。
心の中で何度も何度も。
君の名前を呼んでいた。
声が出るようになったら、いちばん最初に。
君の名前を呼びたかった。
「橘くん」
……やっと呼べた。
「ん……?」
彼はあたしの体をゆっくりと離す。
あたしたちは見つめ合って微笑んだ。
伝えたい想いが
たくさん溢れてくる。
「橘くん……大好き」
ずっとずっと言いたかった。
本当はあの頃からずっと……
「大好きだよっ」
「うん……俺も」
あたしが手に持っていた貝殻の中のペアリング。
あたしたちは、お互いの薬指に指輪をはめた。
「うそだろ……あー、俺のバカ」
指輪のサイズが、あたしの薬指よりも、ちょっとだけ大きかった。
「ふふっ。いいの。すっごくうれしい。それに……」
また宝物が増えたよ。
「それにね、あたしがおばあちゃんになったら、いまよりも指とかシワシワで太くなってると思うし」
そう言ってあたしがニコッと笑ってみせると、彼も穏やかな笑顔を見せた。
一生、大切にするから。