逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
そして、強い鎮痛剤に変えてから、お母さんは眠っている時間が多くなった。
トイレに行けなくなってからは、紙オムツをするようになった。
そしてここ数日は、お母さんが朝方によく吐いてしまうようになったらしい。
吐いて汚れたパジャマは看護師が新しいパジャマに着替えさせてくれるけど、
汚れたパジャマを洗うのは家族であるあたしの役目だった。
今日も学校が終わってから面会に行くと、お母さんはベッドで眠っていた。
病室の隅にはいつものように、吐いて汚れてしまったパジャマが置いてあり、
あたしは、それを持って病院の屋上にある洗濯場へ洗いに行く。
「う~さむっ」
屋上にやってくると、北風が強く吹いていた。
洗濯機の横にある水道場で、先に手洗いで汚れを落としてから洗濯機に入れないと、パジャマの汚れは簡単には落ちない。
制服の袖をまくりあげてから、蛇口をひねると水が勢いよく出た。
「つめたっ」
この寒い季節、手が赤くなり凍ってしまいそうになるくらいに水が冷たい。
パジャマの汚れから漂う強い臭い、手洗いでもなかなか落ちない汚れに毎日苦戦していた。
あたしがいま出来るのは、こんなことくらいしかない。
だから手が冷たくたって我慢する。
これくらい我慢する。
「……うっ……うぅっ……」
あたしのつらさなんて、お母さんに比べたらどうってことない。
お母さんの苦しみを考えると、すぐに涙が出てきてしまう。
「……っく……ひっく……」
泣きながら、お母さんのパジャマを必死に洗った。