逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
お母さんが死ぬのは、もっともっと先の未来のことだと思ってた。
あたしがいつか誰かと結婚して、子供を産んで、
お母さんは“おばあちゃん”って呼ばれる日がきて……。
それが、ある日突然、こんなことになって。
そんなにすぐに信じられるわけなかった。実感なんてわかなかった。
だけど、弱っていくお母さんをそばで見ながら、少しずつ感じ始めた。
お母さんが、この世界からいなくなろうとしてるんだって。
いままで、普段は恥ずかしくてお母さんに言えなかったこと。
産んでくれてありがとうって。
育ててくれてありがとうって。
お母さんのことが大好きだよって。お母さんのこと愛してるよって。
もし病気のことも全て本当のことをお母さんに話してたら、最後に伝えられたのにって思った。
死んじゃ嫌だよって、寂しいよって。
ひとりにしないでって、どこにも行かないでって……お母さんに泣きつくことも出来たのにって思う。
あたしは……なにも伝えられなかった……。
「……お母さんに言いたいこと……たくさんあったのに……」
なにも言えなかった……。
「言葉にしなくてもちゃんと咲下の気持ち、お母さんはわかってると思うよ」
「なんでそう思うの?」
「だって、咲下のお母さんだから……」
そう言って橘くんは、あたしの頭を優しく撫でてくれた。