逢いたい夜は、涙星に君を想うから。



――――――……



それからも、つらく苦しい日々は続いた。



お母さんは、1日のほとんどの時間を眠って過ごした。



目を覚ましても、あたしを思い出すことはなく、



意味のわからないことを発したり、どこか一点を見つめていたりと、



以前のお母さんとはまるで別人のようになっていた。



これもすべて病気のせいだと自分に言い聞かせて毎日を過ごした。



つらい日もあるし、泣きたい日もあった。



それでも、お母さんの前では絶対に泣かなかった。



あたしのことはもう、娘だってわからないのかもしれない。



それでも、心のどこかでお母さんはあたしを感じてくれているはずだと信じたかった。



だから病室でも“お母さん”って、呼びかけ続けた。



お母さんにはいつも笑顔を見せた。



お母さんが眠っていても、その手を握りしめて、心の中でお母さんに語りかけた。



苦しくても、どんなにつらくてもいい。



こんな状況でもかまわないから、この時間がずっと続いて欲しかった。



お母さんと一緒にいられる時間。



お母さんの顔を見つめられる時間。



お母さんの手を握ることが出来る時間。



お母さんの顔を見て、“お母さん”って呼べるのはあと何回……?
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