逢いたい夜は、涙星に君を想うから。
ケータイにかかってきた電話は、いますぐに病院に来てほしいという看護師からの電話だった。
さっき8時過ぎに病院から帰るときは、静かに眠るお母さんの様子からして、まだ大丈夫だと思ってた。
この数時間で容体が悪化したんだ。
間に合うよね……?
お母さんに会えるよね……?
まだダメだよ……。
お母さん……いま行くから。
待ってて……お願い……。
橘くんの背中にぎゅっとしがみつく。
橘くんは自転車の後ろにあたしを乗せて、猛スピードで道を駆け抜けていく。
「こっちのが近道だな」
夜中で交通量も少なく、途中でタクシーもつかまらなかったため、橘くんは自転車の後ろにあたしを乗せて病院へと向かってくれた。
「もうすぐ着くかんなっ」
そう言って、あたしのために息を切らして、
寒い中、汗までかいて、一生懸命に自転車を走らせてくれた。
橘くん……あたし怖いの。
怖くてたまらないよ。
病院に早く行かなきゃっていう気持ちと、
現実を受け止めなきゃいけない不安で。
いままで必死に耐えてきた何かが、
一気に壊れてしまいそうで、怖かった――。