逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


ケータイにかかってきた電話は、いますぐに病院に来てほしいという看護師からの電話だった。



さっき8時過ぎに病院から帰るときは、静かに眠るお母さんの様子からして、まだ大丈夫だと思ってた。



この数時間で容体が悪化したんだ。



間に合うよね……?



お母さんに会えるよね……?



まだダメだよ……。



お母さん……いま行くから。



待ってて……お願い……。



橘くんの背中にぎゅっとしがみつく。



橘くんは自転車の後ろにあたしを乗せて、猛スピードで道を駆け抜けていく。



「こっちのが近道だな」



夜中で交通量も少なく、途中でタクシーもつかまらなかったため、橘くんは自転車の後ろにあたしを乗せて病院へと向かってくれた。



「もうすぐ着くかんなっ」



そう言って、あたしのために息を切らして、



寒い中、汗までかいて、一生懸命に自転車を走らせてくれた。



橘くん……あたし怖いの。



怖くてたまらないよ。



病院に早く行かなきゃっていう気持ちと、



現実を受け止めなきゃいけない不安で。



いままで必死に耐えてきた何かが、



一気に壊れてしまいそうで、怖かった――。
< 87 / 528 >

この作品をシェア

pagetop