逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


ねぇ……お母さん。



あたし、お母さんの娘で本当によかったよ。



優しくて、笑顔が可愛いお母さん。



少し不器用なお母さん。



ねぇ……お母さんとの思い出、



なんでいま、この瞬間に



こんなふうにたくさん溢れてくるんだろう。



いっぱいおしゃべりしたね。



お母さんの作る料理が大好きだったよ。



ねぇ、お母さん……。



いままでいろんなことあったね。



つらいことも、苦しいことも。



でも楽しいことも、うれしいことも、ちゃんとあったよね。



あたし……お母さんがいたから生きてこれた。



「お母さん……」



最後まで泣かない。



お母さんの前では絶対に泣かないって決めたから。



だから最後まで泣かない。



あたしが娘だってこと、わからなくてもいい。



それでもお母さんの瞳にうつる最後のあたしが



泣き顔なんて嫌だから。



だから泣かない。



泣かないよ……。



あたしの笑顔だけ、覚えていて。



お母さんのたったひとりの娘の笑顔。



最後に見つめていて。



「お母さん……ありがとう」



ありがとうって何回言っても足りないよ。



お母さん……。



あたしの声……聞こえてる……?



「大好きだよ」



お母さんのこと、大好きだよ。



あたしの想い……届いてる……?



「……お母……さん……?」



そのとき、お母さんの口元が動いた気がした。



気のせいかもしれない。



でも……。



“……り…………ん…………”
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