逢いたい夜は、涙星に君を想うから。


「遅くなりました」



担当医師が病室に入ってきた。



お母さんは顎を動かして呼吸をしていた。



やがて、心拍数も低下し、血圧も低下とともに測定不能になっていく。



心電図の波形も平らな線の間隔が少しずつ長くなっていく。



お母さんの浅く速かった呼吸が、次第にゆっくりになる……。



「お母さん……よく頑張ったね」



あたしはお母さんに向かって笑顔を見せた。



――ピ――……。



その音とともに、心電図の波形は一直線になった。



お母さんの手を握りしめたまま、お母さんの穏やかな顔を見つめた。



震える手を伸ばし、お母さんの頬にそっと優しく触れる。



お母さん。



あたしを愛してくれてありがとう。



お母さん……あたしも。



愛してる。



これから先もずっと。



愛してるから――。



「午前1時25分……」



そう静かに、医師がお母さんの死を確認した。



最期は、苦しまなくてよかった。



いままで痛みに耐えて、つらかったね。



もう苦しまなくてすむんだね。



やっとお母さんはラクになれたんだよね……?



お母さんは眠るようにして、この世を去っていった――。
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